空き家問題について(その③)
令和3年に行われた、彦根市の空き家除却代執行の第1号についてです。
https://www.city.hikone.lg.jp/material/files/group/33/Press_release_ryakushikidaishikkou.pdf
このプレスリリース資料を見る限りで、個人的にちょっと検討してみました。
ひとつは、代執行の費用の回収のことです。相続人全員の相続放棄が終わるまでに、所有者が亡くなってから8か月かかっているので、場合によっては相続放棄の無効を争う余地もあるかもしれないということです。
相続放棄ができるのは、相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月です。相続人の方が、相続の開始を知ったのはいつだったのか、問題になりえると思います。もし、知ってから3カ月をすぎていたのであれば、放棄は無効で、代執行の費用の回収の可能性が残るかもしれません。彦根市からいつのタイミングでどんなお知らせをしていたかにもよるかもしれません。
もうひとつは、代執行以外の方法もあったかもしれないということです。相続人全員が相続放棄した後、早い段階で相続財産管理人の選任申立てをして、相続財産管理人から国庫帰属の手続きを進めてもらうという選択肢もあったかもしれません。
もちろん、今回のように劣化が進んで危険度が高くなってしまってからでは、緊急ですので、代執行以外の選択肢はないと思うのですが、本件だと自治会から情報提供があってから代執行終了まで約6年ほどかかっているようですので、もしかすると対応の初期の段階であればそれほどまだ危険度が高まっていなかったかもしれません。(もちろん、まだ1件目ですので、今後は迅速化されていくとは思います。)
この段階で、相続財産管理人の選任の申立てをして、相続財産管理人(4月からは「相続財産の清算人」に変わります☆)から国庫帰属の手続きを進めてもらう方法もあるかなと思いました。
(その場合は、国に費用の負担がかかってしまいますが)
相続財産管理人というのは、相続人がいない場合に、関係者が申立てをして家庭裁判所が相続財産管理人を選任する制度です。そして、相続財産管理人が遺産を管理し、法定の手続きを経て(債務があれば弁済するなどして)、残余財産があれば国庫に帰属させるという手続きをしています。
以前は、国庫帰属させるには、不動産のままでは難しく、お金に換えて国庫帰属させる必要があり、それが物件によっては非常に困難だったのですが、今は不動産のままでも国庫帰属させてもらうことができます。(実際建物などはどれくらい帰属させているのか詳細はまだよくわかりませんが。)
調べてみると実際、代執行よりも相続財産管理人の選任申立ての方法により、空き家や空き地の問題に対処している自治体もあるようです。
千葉県船橋市や埼玉県川口市のHPで事例が紹介されていました。
https://www.city.funabashi.lg.jp/machi/juutaku/009/p098376.html
https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01130/040/akiyatoutaisaku/22655.html
代執行に比べれば、自治体の事務負担は格段に少ないと思いますし、特に、土地の売却が比較的容易な事案(売れやすい土地)であれば、申立費用も戻る可能性が高いので、この方法が効率的だと思います。
また売れない土地の場合は、申立費用が高めになり、かつ費用が戻らない可能性も高いですが、代執行と比べて、時間や費用の兼ね合いで、ケースによって使い分けていく方法もあると思います。
相続財産管理人の業務は、弁護士等がさせていただく場合が多く、私も日頃の業務のなかでは割と好きな種類の業務のひとつです。
統計をみると、財産管理は全体の件数も、国・地方公共団体による申立ての件数・割合ともに近年増えてきているようです。
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/R3zaisankanrijitujyoutyousa.pdf
彦根市では、これまであまり、自治体による申立ては見ないような気もしますが、4月から新しくはじまる所有者不明土地・建物管理人の制度とともにぜひ積極的に活用していただけるとうれしいです♪
空き家問題や、相続等につきましては、ぜひ当事務所にご相談ください♪♪
最適な解決方法をご提案いたします♪
作成:弁護士 若山桃子
#彦根市 #空き家 #代執行 #相続財産管理人 #相続 #所有者不明土地管理人
【参考資料】
北村喜宣
「空き家問題 解決を進める 政策法務 実務を乗り越えるための法的論点とこれから」 第一法規