相続放棄(その① 法改正と申述方法について)

 相続放棄後の遺産の管理責任について、4月から変わります。

 相続放棄をした方の遺産の管理責任が軽減されます。

 これまでは、相続放棄をした後も、他の相続人さんが管理を始めてくださるまでは、自己の財産におけるのと同一の注意義務が課せられていました。

 そのため、相続財産に老朽空き家などがあると、どなたも相続されなかったりすると放棄した方もずっと責任を負うことになってしまっていました。

 責任を負わなくするためには、相続財産管理人の選任の申立てをして、相続財産管理人に管理の責任を引継いでもらう必要がありました。相続財産のなかに、売れる見込みのない老朽空き家などがあって、例えば解体費用が、相続財産のなかの預金や現金などでは足りないような場合には、その分、申立ての際の予納金も高くなり、結局のところ実質的には費用の面の負担はしなければならない状態でした。

 この点につき、4月からは、相続放棄の時に現に占有していた場合のみ、その財産を保存しておく義務を負うということに変わります。

 これは、放棄される方にとってはかなり注目の朗報です。老朽空き家についても、放棄の時に占有していたのでない限り、放棄すればそれ以降は、管理の責任を負わなくてよいことになります。

 逆に自治体にとっては、負担が増えることになるのではないでしょうか。相続放棄が増えて、自治体で相続財産管理人(清算人)の選任申立てをしたり、場合によっては代執行で除却せざるをえないケースが増えるかもしれません。

 相続放棄とは、相続に関する権利を一切放棄する手続きです。相続放棄すると、財産も債務も相続しないことになります。

 家庭裁判所で、年間23万件くらい受け付けられています。

 裁判所が関わる相続に関する手続きのなかで、毎年最も件数の多い、いわば大人気メニュー(?)です。

 また、裁判所に手続きせずに、遺産分割の際に、単に自分は何もいらないとする財産放棄や相続分の放棄を含めれば、この何倍もあると思います。

 年間の死亡者数が約140万人として、相続人が3人ずつおられるとすれば、約420万人ですので、そのうち5%くらいは、相続放棄の申述をしているんですね。

 相続放棄の方法について簡単に説明します。

 相続放棄をする場合は、相続の開始を知ったときから、3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出することが必要です。

 弁護士等にご依頼いただくとスムーズです。また、手続き自体は難しくありませんので、ご自身でしていただくことも可能です。ご相談にお越しいただいて、必要書類や書き方のご説明だけさせていただいて、あとはご自身でなさるという方もいらっしゃいます。

 裁判所のHPに必要書類や書き方などは詳しく載っています。申述書の書式もダウンロードしてご利用いただけます。

   相続の放棄の申述 | 裁判所 (courts.go.jp)

 2ページほどの申述書に、名前や本籍、住所、相続財産の内容(わかる範囲で差支えありません)や放棄の理由(選択式でチェックを入れるだけなので簡単です)などを記入し、印紙・切手、戸籍を添付して出します。

 戸籍の取り寄せが、申述人が被相続人の配偶者さんやお子さんの場合は、被相続人さんの分と申述人ご本人の分くらいで、そう多くないのですが、申述人が、被相続人のご両親だったり、兄弟さんや甥御さん姪御さんの場合は、被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍一式が必要で、これは少し手間がかかります。

 作業量はそう多くないですが、本籍地が遠方だったり、途中で何度か本籍地を移していたりすると取り寄せに日にちがかかることがあります。始めてみないと戸籍がどれくらいあるかわからず、所要日数もよみにくいです。ご依頼いただく場合も、ご自身でなさる場合も、早めに始めていただくことをおすすめします。

 また、3カ月では、相続財産や債務の調査が終わらず、放棄するかどうか決められない場合には、期限内に申立てをして期間を延ばしてもらうことができます。また、何らかのご事情で、相続が開始したことを知らずに3カ月経ってしまったという場合にも、申述はできますので、このような場合は、弁護士にご相談ください。

 当事務所では、相続に関するご相談を承っております。

 また、その他身近なお困りごとなどもご遠慮なくご相談ください♪

                                 作成:弁護士 若山 桃子

                                

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