共有不動産について(法改正 その①)

 相続などにより不動産が共有になっている場合があります。

 また、住宅を購入するときに、ご夫婦や親子で、共有にされる場合も多いと思います。一緒に(仲良く?)生活されている間は問題ないのですが、そうでなくなった場合には、共有の物件については、ひとりで決められない事柄が多いので、手間がかかります。

 共有不動産を賃貸に出したいとか、処分したいというときに、共有者同士で合意できないと、なかなか話を進められません。長年わずらわしい思いをされている方も多いと思います。

 例えば、賃貸に出す場合には、基本的に持ち分で過半数の同意が必要です。(法律上、共有物の「管理」といいます。)共有持ち分が、2分の1ずつになっていると、二人で合意できなければ賃貸に出せません。また、居住用に賃貸する場合など、長期間の賃貸借の場合は、共有者全員の同意が必要になります。

 また、すでに賃貸している物件について、賃料を増額したいという場合にも、持ち分で過半数の同意が必要になります。

 また、共有不動産全体を売却する場合や、共有不動産全体について抵当権を設定する場合には、共有者全員の同意が必要です(共有物の「処分」といいます)。

 そして、土地を造成するとか、土地の上に建物を建てるとか、建物の増改築をする場合などにも共有者全員の同意が必要です(共有物の「変更」といいます)。

 また、共有建物を共有者のひとりが占有している場合には、占有の経緯などにもよりますが、基本的にはその者の同意がなければ、他の共有者から一方的に明け渡しを求めることできません。

 このように、不動産が共有になっていると、何かと制約が多いのですが、今年の4月から、法改正で、この共有関係の処理が少し改善されました。

 まず、共有物の変更については、新たに、「・・(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)・・」とされました。

 たとえば、小規模なリフォーム・リノベーション工事などをする場合などには、全員の同意は不要で、持ち分の過半数の同意でよいということです。

 また、共有状態が長く続いていると、共有者が誰なのかわからないとか、どこにいるのかわからない状態になっていることがあります。

 このような場合に、これまでは、相続財産管理人や不在者財産管理人の選任をしてもらうなどしないと、共有物の変更や処分ができず、費用や時間がかかっていました。

 今回の法改正で、このような場合の処理が少し簡単になりました。

 相続財産管理人等を選任してもらわなくても、所在等のわからない共有者以外の共有者が裁判所に請求することによって、その他の共有者の同意を得て(所在等不明の共有者抜きで)共有物の変更をできるように、裁判で決めてもらうことができるようになりました。

 共有者が所在不明の場合だと、一般的には、まずその方の住民票をとって、住所地がどこかを調べます。住民票のある住所地に、実際には住んでいないという場合がありますし、そもそも住民票自体がない(消除されている)場合があります。

 このような場合には、わかっている最後の住所地について、現地の表札などを確認したり、近隣の方や、親族などに問い合わせたりして、ご本人がどこにいるかひととおり探してみて、見つからなければその旨の報告書を作成して裁判所に出すなどして、所在等が不明であることを示します。

 また、共有物を短期間の賃貸に出すなどの「管理」については、共有者が誰なのかわからない場合、どこにいるのかわからない場合に加え、催告した期間内に賛否を明らかにしない場合にも、裁判所に請求して、その共有者以外の共有者の過半数だけで管理に関することを決めることができるようにしてもらうことができるようになりました。

 また、今回、共有物の使用についても、法律が改正されました。

 まず、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除いて、他の共有者に対して自己の持ち分を超える使用の対価を償還する義務を負うこととされました。

 これまで、被相続人の生前から、その承諾を得て同居していた方がその後相続で共有者になっていたケースで、遺産分割が終了するまでは無償で使用させる旨の合意があったと推認されるとして、他の共有者からの不当利得返還請求を認めなかった判例などもありますので、このようなケースについては今後も「別段の合意」があるとされる可能性があると思います。

 そして、今回の改正では、善良な管理者の注意義務をもって共有物の使用をしなければならない旨が法律に明記されました。自分のものでもあるけれど、他の共有者のものでもあるので、他人のものを預かっている場合と同じような高度の注意義務を負うということですね。

 その他、共有物の管理者を選任することもできるようになりました。共有持ち分割合の過半数で、管理者を選任し、管理者は、共有者全員のために共有物の管理に関する行為をすることができるようになります。あらかじめ選任して、お任せしておけば、管理について、いちいち過半数の同意を得る手間が省けるということですね。

 このように、今回の法改正で、共有物について、使用や、管理、また、改修等について、少し、調整がしやすくなりました。

 また、共有物の分割や所在等不明共有者の持分の取得・譲渡についても、法改正がありましたので、次の記事で引き続き書きたいと思います。 

 さて、当事務所では、相続や不動産に関するご相談を承っております。

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                                作成:弁護士 若山 桃子

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