共有不動産について(法改正 その②)
共有物の分割について、法改正がありました。
これまでは、裁判で共有物を分割してもらう場合、法律上は、まずは現物分割で、それが価値を著しく減少させるおそれがある場合には競売となっていました。
ただ、実際には、この二つの方法だけでなく、価格賠償の方法も使われていて、むしろこちらの方が一般的に使われています。
また、共有物分割の訴訟は、(当事者が主張する方法に限らず)裁判所が裁量で適切な方法を決めるようになっているのが特徴です。
今回の改正で、まずは現物分割か価格賠償のどちらか、それができないときや価格を著しく減少させるおそれがあるときにのみ、セカンドチョイスとして競売、というように規定が変わりました。
共有物の性質、形状、共有関係の発生原因、共有者の数および持ち分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望や合理性の有無などを総合的に考慮して、裁判所が決める、という点についてはこれまでと変わりありません。
また、今回の改正では、不動産の共有者のうち、誰かわからない、あるいはどこにいるのかわからない方がおられる場合、その持ち分を他の共有者が取得できるようになりました。
これは結構、画期的です。
これまで、そうした共有者がいる場合に、共有物の変更や処分ができず、管理にも支障が生じており、解消するためには不在者財産管理人の選任や失踪宣告などをする必要があり、時間と費用がかかっていました。
これからは、そうした場合に、他の共有者の請求により、裁判所が、その所在等不明共有者の持ち分を他の共有者に按分で所得させることができるようになります。この場合、所在等不明共有者の持ち分の価格分の金員を(持ち分を取得する)他の共有者が供託します。
また、他の共有者全員がひとりの共有者に持ち分を譲渡する場合にかぎり、そのひとりの共有者に、所在等不明共有者の持ち分を譲渡することができるように裁判で決めてもらうこともできるようになります。
共有者の所在が不明というのは意外によくあります。住民票のあるところに住んでいない場合というのは、たとえば、債務の取り立てを逃れるために引っ越したけれど住民票を移していないとか、派遣などの仕事で各地を転々と移っておられたりで住民票を移していない、また、高齢者施設などに入居したり、長期の入院をされていたり、刑務所に入っているという場合もありますし様々です。
また、誰が共有者なのかわからない、というのは、たとえば、共有者の一人について、生きていれば百二十歳以上になっておられる計算で、おそらく亡くなっているけれども死亡届が出ていないというような場合があります。昔は死亡届が出されない場合も割とあったようです。海外に移住されてそのまま届が出ないというのもよくありますし、数は少ないですが身元不明の状態で亡くなられると、死亡届も出ないことになります。
余談ですが、明治から大正にかけて、滋賀県からカナダに多くの方が移民として渡っています。10年ほど前、「バンクーバーの朝日」という映画が公開され、妻夫木聡さんや亀梨和也さんが出演されていました。ご覧になられた方もいらっしゃるでしょうか。この映画は実際に、彦根からバンクーバーに移民で行かれた方々の草野球チームの話をもとに作られているそうです。
地元でも忘れられていた「バンクーバーの朝日」主力メンバー絵はがきに(1/2ページ)- 産経ニュース (sankei.com)
この時代に、カナダには滋賀県や和歌山県から多くの方が移住されていて、ハワイへは広島県や山口県の方が多く移住されているなど、国内の地域ごとに海外の特定の国や地域とのつながりが深かったりするのも興味深いなと思います。
結構多くの方が移住されていますので、実際たまに、相続の事件で、古い戸籍を確認していくと、カナダに移住されている方がおられる場合もあります。
(昔に海外に移住された方の現在の所在や、あるいは家族関係を確認するのはとても困難ですので)、現実問題としては、そうありがたくないのですが、一方で、地域の歴史を感じることができ、興味深くもあります。
最近は、国内の賃金が安すぎるなどの理由で、カナダなど、海外への移住が再び注目されています。移民政策は、国によってさまざまですし、同じ国でも、時期によって変わっていくので、いつまで住めるのか、どのような社会保障が受けられるのかなど、予測できない面も大きく、今の時代でも、海外移住にはさまざまなリスクがあります。
100年以上前なら、なおさらそうだったと思いますが、リスクを背負って海外に移住され、生活の基盤を築かれたのだなと思うと、すごいですね・・。
・・元の話に戻ります。
不動産の共有関係でお悩みの方は、今回の改正を機に、権利関係の整理をしておくのも良いかもしれません。
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作成:弁護士 若山 桃子
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