働いていると色々な労働問題に巻き込まれることがあります。会社を解雇された、退職を強く迫られている、長年働いてきたけど突然契約の更新を拒否された、残業代・給料・退職金が支払われない、セクシャルハラスメント(性的な嫌がらせ)を受けた、就業規則を一方的に変更されて困っているといったものがよくある労働問題です。
労働問題は、少しでも早く弁護士に相談した方がより適切な解決につながることが多い事件といえます。使用者から受けている扱いに疑問をお持ちになった時は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
*当事務所では、原則として使用者側の労働事件は扱っておりません。
労 働 災 害
仕事中や通勤中に事故でけがをしてしまったり、仕事が原因で病気になってしまった場合、補償を受けるために何をどうすればいいでしょうか?
①~③の段階に応じて、ご紹介させていただきます。
① 「労災保険給付申請について」
② 「審査請求・再審査請求・処分取消しの訴えについて」
③ 「労災民事賠償請求について」
①労災保険給付申請について
仕事中や通勤中に事故でけがをしてしまったり、仕事が原因で病気になってしまった場合、補償を受けるために何をどうすればいいでしょうか。
まず、労災保険が頭に浮かぶ方が多いのではないでしょうか。
労働者の方であれば(一人親方等で特別加入している方も)、労災保険により、業務上の災害について、使用者の過失の有無に関わらず、休業補償、医療について補償、逸失利益(後遺障害の場合等に、将来得られたはずの収入が低下した差額分)についての補償を受けることができます。
この労災保険給付の請求は、被災者本人(万一亡くなられた場合には遺族)がすることができます。事業所の場所によって、滋賀県でしたら滋賀労働局か、大津・彦根・東近江の労働基準監督署に所定の保険給付請求書を提出して請求します。(会社が請求の手続きを代行してくれることもあります。)
労災保険の請求手続きについて、弁護士に依頼していただくこともできます。
請求手続きがよくわからなかったり、負担であるという場合には、一度ご相談ください。また、ひとくちに業務上の災害といっても、被災者と事業主の契約関係や、負傷等をした場所や時間、状況や負傷等の内容によっては、業務上の災害に当たるかどうか不明確な場合も多いですので、請求の段階で弁護士に依頼していただけますと、必要に応じて意見書や上申書を作成して添付することにより、より適切な給付を受けられることがあります。
また、病気などで、もしかしたら、仕事が原因かもしれないという場合にも、一度ご相談ください。
仕事の内容により、典型的な有害因子とそれに起因する疾病が法律で定められています。(「職業病リスト」)
例えば、重いものを運ぶ仕事で腰痛、暑い場所での仕事で熱中症といった比較的はっきりわかりやすいものから、長時間の業務によるくも膜下出血や脳梗塞、心筋梗塞、その他、発がん性物質によるもの、粉じんによるもの、各種化学物質によるものなどが列挙されています。
医師による診断内容やお仕事の状況をお聞きしながら、労災保険請求が可能かどうかも含めて一緒に検討させていただきます。
また、労災保険給付は、認定が適切でない場合もありますし、また労災により生じた損害のすべてを補償するものではありません。
②審査請求・再審査請求・処分取消の訴え
労災保険給付について申請をした場合に、なかには、事故の状況等により労災であると認定されなかったり、医師の診断の内容等により、認定されても後遺障害の等級が低く金額が少ないという場合があります。
もし、労災保険給付の決定を受けた場合には、内容についてよく検討する必要があります。もし内容に疑問がある場合や、納得できない点がある場合は、まずは一度弁護士にご相談ください。事故等の事情の聴き取りや、関係書類を確認しながら、より適正な内容の決定を得られるように、一緒に検討し、助言をさせていただきます。
労災保険給付の決定に不服がある場合には、労働者災害補償保険審査官に審査請求を、当該審査請求に対する処分に不服がある場合には労働保険審査会に再審査請求をすることができます。弁護士が代理人として請求することもできます。
また、審査請求は、原則としてもとの処分があったことを知った日から60日以内にしなければなりません。不服や疑問があれば、できるだけ早く弁護士に相談されることをおすすめします。
審査請求をしてもなお、結果について不服である場合には、裁判所に処分取消の訴えをすることになります。処分取消の訴えは、原則として審査請求に対する裁決があったことを知った日から6か月以内にしなければなりません。処分取消の訴えを検討される場合は、まずは弁護士に相談されてはいかがでしょうか。国を被告とする裁判になります。
③ 労災民事賠償請求
労災保険については、適正な認定を受けて、しかるべ給付を受けることが大切ですが、労災保険の適正な給付を受けられた場合にも、労災による損害のすべてが補償されるわけではありません。
たとえば、労災保険では、入通院や後遺障害の慰謝料については給付がありませんし、治療期間の休業損害についても一部しか(約8割)給付されません。一般的には、治療期間が長いほど、また後遺障害が重いほど、労災給付では補償されない部分が大きくなります。
労災について、使用者に責任がある場合には、使用者に対して損害賠償請求することができます。たとえば、使用者の不法行為責任、自賠法上の運行供用者としての責任(フォークリフトやクレーンによる事故の場合など)、安全配慮義務違反による債務不履行責任などがこれにあたります。
労災保険給付を受けたうえで、使用者にも損害賠償請求できるということは、特に知らされず、職場や周りの人に聞いてもわからないという場合も多いかと思いますが、ぜひ一度弁護士に相談されることをおすすめします。特に後遺障害が残ってしまった場合には、きちんと賠償を受けられるかどうかは、今後の生活にとってとても重要な問題ですので、ご相談いただいたうえで、よく検討する必要があります。
使用者に責任がある場合には、損害額を算定して、まずは請求書を作成して送付し、話し合いで解決できるようであれば話し合いで解決し、話し合いでの解決が難しければ裁判をすることになります。
時期としては、基本的には、治療が終了して症状固定になった段階ですと、損害額の算定ができますので、症状固定後に請求、交渉を開始する場合が多いです。
もちろん、治療期間中であっても、ご相談いただきますと、今後の方針や見通しについてアドバイスさせていただきます。治療中は、いつまで治療しなければならないのか、もと通りに回復するだろうか、職場にはもと通りに戻れるのだろうか、など不安を感じておられることも多いかと思いますが、ご相談いただきながら、今後の方針を一緒に検討することで、少しでも将来への不安を軽減していっていただけるかと思います。
職場でセクハラ・パワハラの被害を受けられた場合、どうすればよいでしょうか
① 相手方に対して、その行為がセクハラ・パワハラにあたると伝えて、やめてくれるよう求める
セクハラ・パワハラについては、人によって感じ方の違いが大きい行為もあります。まずは話し合うことが必要です。
② 証拠を残す
相手方に話してもやめない場合や、相手方に言うことができない場合には、何か証拠にできるものを残しておくことが必要です。セクハラやパワハラは、他人の目に触れないところで行われることが多く、セクハラ・パワハラの事実の有無自体が争われる場合が多いです。セクハラ・パワハラの状況について、いつ、どこで、どのような言動があったのか、詳しくメモを残し、可能であれば、セクハラ・パワハラの内容がわかるような録音・録画や、メールなどの通信記録や診断書を残しておきましょう。
③ 他の上司に相談
セクハラ・パワハラは、相手方個人だけでなく、会社にもそうした行為を防止する義務があります。可能であれば早めに他の上司に相談しておきましょう。セクハラ・パワハラが行われた場合、会社側としては、配置換えや何らかの懲戒処分を行うことがあります。
④ 医療機関の受診
セクハラ・パワハラを受けることは、大きな精神的負担になります。ストレスで眠れないなどの場合には、早めに医療機関を受診することも必要です。
⑤ 損害賠償請求
セクハラ・パワハラの被害を受けたことについて、弁護士にご相談・ご依頼いただくなどして、相手方や会社の民事上の責任を追及することができます。例えば、セクハラ・パワハラによる精神的損害、治療費、休業補償、逸失利益等につき、損害賠償を求めることができます。
精神的損害(慰謝料)の金額は、セクハラ・パワハラの内容・程度(直接的暴力が加わったか等)、反復継続性、精神疾患発症の有無、退職の有無、会社側の事後の対応などにより決まります。
相手方や会社に対して民事上の責任を追及するタイミングとしては、やはり在職中は心理的に難しいため、退職後に行う場合が多いです。まずは、相手や会社に請求をして交渉を行い、話し合いがつかなければ必要に応じて調停や裁判を行います。この際、不法行為責任についての損害賠償請求については3年の消滅時効があるため、注意が必要です。
そして、セクハラ・パワハラの被害に遭われた場合には、早い段階で弁護士に相談していただきましたら、事後的な損害賠償請求に限らず、会社側とどのように話し合うか、あるいはどのように証拠を確保するか、などについてもアドバイスさせていただきます。
⑥ 労災保険請求
セクハラ・パワハラが原因で精神障害を発病した場合には、労災保険の対象になりえますので、労働基準監督署に相談して労災請求をすることができる場合があります。セクハラについて、詳細を話すことが苦痛になるような場合には、通常の窓口とは別に、予約のうえ、臨床心理士などの資格を持った担当者に相談することもできるようです。